
モンステラの組織培養株(メリクロン株)
Tissue-Cultured Monstera (Mericlone Plant)
概要
Overview
組織培養(Tissue Culture)とは、植物の一部(茎、葉、根など)から細胞や小さな組織を取り出し、無菌状態で培養して新しい植物を人工的に増やす栽培技術です。クリーンな培養室で微細な組織を増殖させることから、「クローン栽培」とも呼ばれます。組織培養の中でも、植物の「分裂組織(メリステム)」から得たクローン苗を特に「メリクロン苗(Mericlone)」と呼びます。「メリクロン」は、「メリステム(Meristem)(=成長点)」+「クローン(Clone)」を組み合わせた造語です。成長点には病原体が入り込みにくく、特にウイルスに感染していない健康な細胞が含まれているため、そこから増やした苗は病気に強く、形質も安定していると言われています。そのため、高品質な苗を大量生産できる方法として、メリクロンは洋ランや観葉植物の分野で広く用いられてきました。モンステラもその一つで、安定した斑入り模様や葉の形状を再現するために利用されています。こうした組織培養苗は、最初は完全に管理された無菌環境で育てられているため、いきなり外の環境に出すと枯れてしまう恐れがあります。そのため、「順化(じゅんか)」という段階を経る必要があります。順化とは、培養環境から通常の栽培環境(空気中・土・自然光など)に植物を少しずつ慣らしていくプロセスです。これを丁寧に行うことで、組織培養苗は安定して成長できるようになります。モンステラの順化については、恐らく他の方々が解説していると思いますので、本サイトでは、順化を経たモンステラの組織培養株(メリクロン株)が果たしてちゃんと成長するのか?について栽培記録でご紹介していきたいと思います。
特徴
Features
モンステラの組織培養株(メリクロン株)の主な特徴をご紹介致します。
01
病気に強く、健全な株が得られる
組織培養は無菌状態で行われるため、ウイルスや細菌などの病原体に感染していない、非常に健康な苗が得られます。特にメリクロン苗は、成長点(メリステム)を使って増やされるため、病気に強く、栽培初期のトラブルが少ないのが特長と言われています。
02
親株と同じ形質(性質)を安定して受け継ぐ
クローン技術により、親株とまったく同じ遺伝情報を持った苗が作られると言われています。これにより、葉の形、模様、斑の入り方などが安定し、特に観賞価値の高いモンステラのような植物において重宝される様です。
03
大量生産が可能で、希少品種の普及にも貢献
組織培養では短期間で多数の苗を作ることができるため、希少な品種や人気のある斑入り品種などを安定的に供給することができます。これにより、市場価格の安定や、一般の消費者への普及にもつながります。ただし、特に古くから園芸をやられている方々の中には、組織培養株(メリクロン株)は園芸では無くビジネスだと嫌悪を抱く方も中にはいらっしゃる様です。
組織培養株(メリクロン株)のデメリット
上記は主にモンステラの組織培養株(メリクロン株)のメリットについてご紹介しました。以下は逆にデメリットとなります。
01
個体差が少ない(個性がない)
クローンなので、自然交配のような“唯一無二の個体”は生まれない。植物コレクターの中には、個体差のある実生株(種から育てた株)を好む人も。
02
価格が高いことがある
メリクロン化には高度な設備と技術が必要なので、初期は高価に販売されることもある(特に新しい希少品種)。
03
斑の再現性に限界がある場合も
斑入り品種の中には、遺伝的に不安定な斑を持つものもあり、メリクロンでも全てが理想的な斑になるとは限らない。
組織培養株(メリクロン株) vs 実生株 比較表
上記の通り組織培養株(メリクロン株)は、自然交配のような“唯一無二の個体”は生まれない。植物コレクターの中には、個体差のある実生株(種から育てた株)を好む人も。という内容をご紹介いたしました。ここで気になってくるのが、組織培養株(メリクロン株)と実生株の比較です。具体的な内容について、比較表にまとめてみました。
| 項目 | メリクロン株(クローン苗) | 実生株(種から育てた苗) |
|---|---|---|
| 遺伝的特徴 | 親株と同一(クローン) | 親とは異なる遺伝情報(個体差あり) |
| 外見の安定性 | 葉の形・斑の入り方などが安定 | 個体によって大きく異なる |
| 斑の再現性 | 高め(親と似る) ※ただし100%ではない | 不確定(出ないことが多い) |
| 希少性・個性 | 個性は少ないが安定品質 | 世界に一つだけの表現になる可能性あり |
| 病気・虫害のリスク | 低い(無菌状態で培養) | 普通(自然環境に由来) |
| 価格 | 初期はやや高価なこともあるが安定供給で徐々に下がる傾向 | 斑入りが出れば超高額になることも |
| 流通性 | 市場に流通しやすい | 種の入手・育成が難しい(特に斑入り) |
| 繁殖方法 | 組織培養(専門技術が必要) | 交配・種まきで可能(手間がかかる) |
上記の通り、実生株は世界で一つだけの唯一無二なモンステラの新種が誕生する可能性を秘めています。ただしモンステラの交配は、モンステラを成熟させる為の環境と栽培スキルが必要となってきます。私のモンステラでは、湘南方面のマンションの庭で、希少種であるモンステラスケルトンと斑入りのモンステラの交配等、様々な品種のモンステラの開花に成功し交配にチャレンジしています。詳しくは以下のページでまとめています。
FAQ
モンステラの組織培養株(メリクロン株)について寄せられた質問と回答
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モンステラの組織培養株(メリクロン株)は、普通の株分け苗とどう違うのですか?
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モンステラの組織培養株(メリクロン株)は、無菌状態で培養されたクローン苗です。株分け苗は親株からカット(剪定)して増やす方法ですが、組織培養では成長点(メリステム)から直接細胞を取り出し、培養容器で成長させます。そのため、組織培養株は病気に強く、遺伝的に均一な品質を持つのが特徴とされています。
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組織培養株(メリクロン株)は、どのくらいで育てることができますか?
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組織培養株(メリクロン株)は、順化がしっかりと行われている状態で販売されることが多いため、通常のモンステラと同じように育てることができるとされています。順化が終われば、環境に慣れるまで数週間はかかることがありますが、その後は通常の育成と同じように成長する様です。私は自ら順化は行わず、順化済みの安定した株を購入して育てています。
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「未順化前の苗を売るべきでは無い」と思うのですが、購入者の立場でどう思いますか?
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結論:未順化株の販売そのものよりも「販売方法」と「購入者の理解度」が大切です。
未順化前のモンステラの苗(組織培養株・メリクロン株)は、一般の栽培環境では非常に扱いが難しい苗です。フラスコから取り出された直後の状態は、無菌で湿度100%の特殊な環境で育っており、外気や光、菌にまだ慣れていません。そのため、外気に出すと根が乾燥して水を吸えなくなったり、葉がしおれて枯れてしまうリスクがあります。
未順化株とは?
未順化株とは、組織培養(メリクロン)で増やした直後の苗で、まだ「順化」という工程を終えていない個体のことを指します。順化とは、ラボ環境から一般的な空気・光・温度・湿度へ徐々に慣らしていく作業であり、これを経ないと株は生き残ることが難しい場合があります。
この順化には、温度・湿度・光量を細かく管理できる設備や知識が必要です。そのため、一般家庭では順化に失敗するケースが多く、結果的に苗を枯らしてしまうリスクが高いのです。
「売るべきではない」と言われる理由
未順化株の販売が批判される背景には、「販売側がリスクを説明しないまま販売する」ことがあります。順化が必要であることや、育成難易度の高さをきちんと説明せずに「簡単に育ちます」「初心者向け」などと表現して販売すると、購入者が失敗してしまう可能性が高く、トラブルの原因にもなります。
販売そのものは悪ではない
一方で、研究者やナーセリー(育種家・生産者)が自分で順化を行う前提で購入するケースもあります。この場合、未順化株の販売自体は間違いではありません。つまり重要なのは、購入者の知識と環境を前提にした販売であるかどうかという点です。
購入者としての判断基準
購入者の立場から見ると、次のように選ぶのがおすすめです。
- 一般的な家庭栽培・初心者の場合
→ 「順化済み」と明記された株を選ぶのが安全です。 - ラボ環境や順化設備を持っている場合
→ 「未順化株」を購入して自分で順化に挑戦しても問題ありません。
また、販売ページに「順化済み」「順化が必要」といった説明がしっかり記載されているかどうかも、信頼できる業者を見分ける大切なポイントです。
まとめ:購入前に確認したいポイント
- 「順化済み」か「未順化」かが明記されているか
- 順化の必要性・リスクについて説明があるか
- 実際の写真(実株画像)が掲載されているか
- 不自然に安すぎる価格ではないか
モンステラの組織培養株(メリクロン株)は、手頃な価格で入手できる反面、状態や順化段階によって栽培難易度が大きく変わります。購入前に順化の有無を確認することで、トラブルを防ぎ、長く安心して育てることができます。
- 一般的な家庭栽培・初心者の場合
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栽培記録
Growth Record
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Types of Monstera
モンステラの種類
私が現在栽培しているモンステラの種類は、一般的な人気の種類(モンステラデリシオーサ、モンステラボルシギアナ)と、その他の種類(sp. ペルー、アカコヤグエンシス、アクミナータ、アダンソニー(マドカズラ)、エスケレート、オブリクア、サブピンナータ、シルテペカナ、スタンデリアナ、スプルセアナ、ドゥビア、ピナッティパルティタ、レクレリアナ)です。それぞれの詳細については、以下のページでまとめています。




