モンステラ属(学名:Monstera)は、サトイモ科(Araceae)に属する熱帯植物のグループで、世界に約59種が確認されています。本ページでは、モンステラ属の分類体系・学名・代表種の特徴を一覧形式で整理し、観葉植物として流通する主要種との違いもわかりやすく解説します。近年は、遺伝子解析や形態学的研究が進み、モンステラ属の分類が再検討されています。たとえば、Monstera deliciosa(デリシオーサ)とMonstera borsigiana(ボルシギアナ)の関係や、園芸で「モンステラ・ミニマ」と呼ばれる種が実際には別属(ラフィドフォラ属)に属することなど、分類学と流通名のズレも注目されています。

本記事は、国際アロイド協会(IAS)Kew「Plants of the World Online」ritannica、およびWikipedia英語版など、信頼性の高い学術文献と国際データベースを参照して作成しています。園芸名・トレードネーム(例:Thai Constellation、Albo Variegataなど)は対象外とし、純粋に学術的なモンステラ属の分類(taxonomy)に焦点を当てています。

モンステラ属の上位分類

モンステラ属(学名:Monstera)は、被子植物(Angiosperms)に属するサトイモ科(Araceae)の一属です。サトイモ科の中でも、モンステラ属はアンスリウム属(Anthurium)やフィロデンドロン属(Philodendron)と並ぶ代表的な観葉植物の系統として知られています。学術的には、以下のような階層構造に分類されます。

分類階層学名/日本語名
Plantae(植物界)
Magnoliophyta(被子植物門)
Liliopsida(単子葉植物)
Alismatales(サトイモ目)
Araceae(サトイモ科)
Monstera(モンステラ属)

モンステラ属の代表的な種類と特徴一覧

モンステラ属(学名:Monstera)は、サトイモ科(Araceae)に属する熱帯性のつる植物で、現在およそ59種が学術的に確認されています。その中でも観葉植物として流通する種は限られており、特に人気が高いのがモンステラ・デリシオーサ、モンステラ・ボルシギアナ、モンステラ・アダンソニーなどです。これらは形態的特徴・成長スピード・葉の切れ込みの深さ・気根の発達の仕方などにそれぞれ個性があり、観葉植物としての姿形や育て方にも違いがあります。以下の表では、モンステラ属の代表的な種類を学名(英語)・日本語名・特徴の順に整理しています。学名の部分から各種の詳細ページへリンクしており、個々のモンステラの形態・分布・育て方をより詳しく確認できます。

学名(Species)日本語名/通称特徴・備考
Monstera deliciosaモンステラ・デリシオーサ最も代表的な大型種。果実は食用で「ホウライショウ」とも呼ばれる。葉の切れ込みが深く観葉植物の定番。
Monstera borsigianaモンステラ・ボルシギアナデリシオーサの亜種・近縁。葉がやや小さく支柱栽培に向く。斑入り株が多数流通。
Monstera adansoniiモンステラ・アダンソニー小型で穴あき葉が特徴。吊り鉢や壁面装飾に人気。別名「スイスチーズプラント・ミニ」。
Monstera dubiaモンステラ・ドゥビア幹に貼り付いて登る「貼り付き型モンステラ」。幼葉は銀斑模様を持つ。
Monstera obliquaモンステラ・オブリークア穴が極端に大きく希少。特に「Monstera obliqua Peru」が有名。
Monstera standleyanaモンステラ・スタンレヤーナ細長い葉が特徴。白や黄の斑入り株が観賞価値高い。
Monstera pinnatipartitaモンステラ・ピンナティパルティタ成長に伴い羽状に裂ける。成株と幼株で葉形が異なる。
Monstera lechlerianaモンステラ・レクレリアーナアダンソニーに似るがやや大型。葉の穴が整列する特徴。
Monstera subpinnataモンステラ・サブピンナータ羽状に深く裂ける珍しいタイプ。南米原産。
Monstera siltepecanaモンステラ・シルテペカーナ幼葉期は銀灰色の模様が入り美しい。地を這う性質を持つ。
Monstera acuminataモンステラ・アクミナータアダンソニーに似るが穴が縁寄り。コンパクトで人気。
Monstera karstenianaモンステラ・カルステニアーナ濃緑で厚い葉。強健で室内栽培向き。別名「Peru」。
Monstera epipremnoidesモンステラ・エピプレムノイデス大型葉の美種。「スケルトン(Esqueleto)」として流通。
Monstera spruceanaモンステラ・スプルセアナ幼葉は貼り付き型。成葉で切れ込みが現れる。
Monstera adansonii var. laniataモンステラ・ラニアータアダンソニーの亜種。葉が大きく穴が規則的。
Monstera adansonii var. blanchetiiモンステラ・ブランケッティ葉が細長く穴が縦に並ぶタイプ。
Monstera tuberculataモンステラ・チュベルクラタ幼葉期は貼り付き型、成葉で穴が消失する独特の形態。
Monstera tacanaensisモンステラ・タカナエンシスデリシオーサに近縁だが葉が細長い。流通稀。
Monstera minimaモンステラ・ミニマ(※他属)園芸で「モンステラ・ミニマ」と呼ばれるが厳密には別属(Rhaphidophora)。
Monstera deliciosa subsp. sierranaモンステラ・シエラナデリシオーサの地域亜種。葉が広く大型化する傾向。
Monstera adansonii subsp. klotzschianaモンステラ・クロッツスキアーナブラジル原産。葉の穴が縁沿いに広がる特徴。

分類学的な補足

  • モンステラ属は約59種が確認されています(Madison, 1977)。
  • 主に中南米熱帯地域(メキシコ〜ブラジル)に分布し、多くが着生性植物
  • 観葉植物として流通するのは10種前後ですが、学術的多様性は非常に高い属です。

モンステラ学名に使われる「var.」「subsp.」などの意味

モンステラ属(Monstera)の学名には、しばしば「var.」や「subsp.」といった略号が付いています。これらは植物分類学(botanical taxonomy)における学名の階層(ランク)を表し、同じ種の中での地域差や形態差を細かく区別するための分類を意味します。以下では、それぞれの略号と意味をわかりやすく解説します。

植物分類の基本階層

階層名ラテン語略号意味・位置づけ例(モンステラの場合)
genusなし最も基本的なグループMonstera(モンステラ属)
speciesなし同じ特徴・繁殖可能な個体群Monstera deliciosa
亜種subspeciessubsp.(または ssp.)同じ種内で地域的・形態的に異なる集団Monstera deliciosa subsp. sierrana
変種varietasvar.亜種より細かい自然変異Monstera adansonii var. laniata
品種(形態)forma(form)f.偶発的な個体差・葉色や形の小変異Monstera deliciosa f. aurea
栽培品種cultivarcv. または ‘ ’人為的に選抜された園芸品種Monstera deliciosa ‘Thai Constellation’
subsp.(=subspecies:亜種)
  • 同じ種の中で、生育地域や環境への適応によって分化したグループ
  • 外見や分布は異なるが、遺伝的には同じ種であり交配も可能。

例: Monstera deliciosa subsp. sierrana
→ デリシオーサの高地適応型。葉がより大きく広がる傾向があります。

var.(=varietas:変種)
  • 亜種よりもさらに細かい自然変異を指します。
  • 葉の形、切れ込み、斑の入り方などの地域・個体差レベルの変化

例: Monstera adansonii var. laniata
→ アダンソニーの中で葉の穴が規則的なタイプ。自然変異によるものです。

f.(=forma:品種・形態)
  • 非常に小さな違い(葉色・花色など)のみに基づく分類。
  • 学術上の意義は小さいが、園芸的には価値が高いケースもあります。

例: Monstera deliciosa f. aurea
→ 黄色斑(ゴールデンバリエガータ)が現れる個体。

cv.(=cultivar:栽培品種)
  • 人為的に作り出された園芸選抜株(トレードネーム)
  • 学術的な種階層ではなく、栽培・流通上の呼称です。

例: Monstera deliciosa ‘Thai Constellation’
→ 組織培養(TC)で生まれた人工的斑入りモンステラ。正式な学名ではありません。

その他よく使われる略語

略号語源意味・使われ方
ssp.subspecies“subsp.” と同義(古い文献で多い)
sp.species種不明の植物を指す(例:Monstera sp.
spp.species plural複数種をまとめて指す(例:Monstera spp.=モンステラ属全般)
aff.affinis「近縁種(似ているが同種不明)」を意味する(例:Monstera aff. adansonii
cf.confer「おそらく〜に近い」「比較せよ」の意(例:Monstera cf. dubia
hyb.hybrid雑種(交雑個体)(例:Monstera × deliciosa-borsigiana

階層の関係イメージ

この図は、モンステラ・デリシオーサ(Monstera deliciosa) を基準にした分類階層をツリー構造で表したものです。上から下へ行くほど、分類が細かく、より限定的なグループを示します。

属(Genus) ─ Monstera
└── 種(Species) ─ deliciosa
├── 亜種(subsp.) ─ sierrana
├── 変種(var.) ─ laniata
├── 品種(f.) ─ aurea
└── 栽培品種(cv.) ─ ‘Thai Constellation’

分類と園芸トレードネームの違い

モンステラの世界では、「学術的な分類(taxonomy)」と「園芸的なトレードネーム(trade name)」は、似ているようでまったく異なる概念です。両者を区別して理解することで、学名の正確な意味や、栽培・流通上の品種呼称を正しく把握することができます。

学術分類(例)園芸トレードネーム(例)備考
Monstera deliciosaThai Constellation, Albo Variegata, White Lava組織培養(TC)由来の人工選抜株。
Monstera epipremnoidesSkeleton(スケルトン)学名由来の正式種だが、園芸名として定着。
Monstera adansoniiMint Variegated, Wide Form, Narrow Form葉形・斑パターンによる園芸分類。

今後の分類研究の動向

  • 分子系統解析により、Monstera属・Philodendron属・Rhaphidophora属の関係が再検討中。
  • 一部の種(例:Monstera minima)は将来的に他属へ移動する可能性あり。
  • 新種報告(例:Monstera juliusii)が増加しており、今後リスト更新が続く見込み。

まとめ

  • モンステラ属はサトイモ科の熱帯植物で、世界に約59種が存在します。
  • 代表種はモンステラ・デリシオーサ、モンステラ・アダンソニーなど。
  • 観葉植物として人気が高く、斑入りやトレードネーム品種も多い属です。
  • 葉の切れ込み方や成長過程の変化は多様で、分類学的にも進化的にも興味深いグループです。

参考文献

  • Madison, M. (1977). A Revision of Monstera (Araceae).
  • Kew Gardens: Plants of the World Online
  • International Aroid Society: The Genus Monstera
  • Britannica: Monstera – Plant Genus

よくある質問

モンステラ属(Monstera)の分類について寄せられた質問と回答

モンステラ属の中で最も一般的な種類はなんですか?

観葉植物として最も一般的なのは「モンステラ・デリシオーサ」です。流通量が多く、育てやすく、斑入りタイプも豊富です。モンステラ・デリシオーサと比較されやすいのが、モンステラ・ボルシギアナです。モンステラ・デリシオーサとモンステラ・ボルシギアナの違いについては、以下のページで詳しくまとめています。

モンステラ・ミニマはモンステラ属でしょうか?

いいえ。園芸上「モンステラ・ミニマ」と呼ばれていますが、学術的には「ラフィドフォラ属(Rhaphidophora)」に分類されます。

モンステラの分類は今後変わる可能性がありますか?

あります。分子系統解析により、属の境界や種の再編が進行中です。

Types of Monstera

モンステラの種類