
モンステラの種類
実際に自ら育てる33種類のモンステラをご紹介
目次
モンステラデリシオーサ
Monstera Deliciosa
モンステラデリシオーサは、モンステラの仲間の中では最も大きな葉を持ち、成熟した株では一枚の葉の大きさが1メートル近くにもなります。成熟した葉にはモンステラらしく深い切れ目が入り、沢山の穴があきます。ハワイアン雑貨等で見かけるモンステラは、モンステラデリシオーサの大きな葉がモチーフにされている事が多いです。一般家庭では、モンステラの葉は1メートルまで大きくする事はできないとよく見かけますが、我が家のモンステラデリシオーサは、一枚の葉のサイズが1メートルまである株も存在します。私が実際に育てている株を中心に、モンステラデリシオーサの仲間をご紹介致します。
モンステラデリシオーサの詳細については、以下のページでまとめています。
近年登場したモンステラの人気トレードネーム一覧(斑入り・TC株を含む)
New and Popular Monstera Varieties (Variegated & TC Forms)
モンステラの世界では、近年、組織培養(TC株)や選抜育種によって、新しいトレードネーム(商業流通名)が次々と登場しています。ここでは、2020年代以降にSNSやナーセリーで注目を集めているモンステラの名称を一覧形式で紹介します。
これらのトレードネーム株は、基本的にモンステラ・デリシオーサ(Monstera deliciosa)をベースとした系統です。かつて「モンステラ・ボルシギアナ(Monstera deliciosa var. borsigiana)」として区別されていたタイプも存在しますが、現在では同一種内の形態差(葉の厚みや節間の長さの違い)とみなされることが多く、流通上もまとめて「デリシオーサ系」として扱われています。
海外で人気の新しいモンステラ品種(トレードネーム)
- Monstera 'Shamrock Shake'(モンステラ・シャムロック・シェイク)
- Monstera 'Masterpiece'(モンステラ・マスターピース)
- Monstera 'Devil'(モンステラ・デビル)
- Monstera 'Ocean Mint'(モンステラ・オーシャン・ミント)
タイ発のTC株・斑入りモンステラシリーズ
- Monstera Thai Constellation 'Crème Brûlée'(モンステラ・タイ・コンステレーション・クリーム・ブリュレ)
- Monstera Thai Constellation 'Medusa'(モンステラ・タイ・コンステレーション・メデューサ)
- Monstera Thai Constellation 'Green Snow'(モンステラ・タイ・コンステレーション・グリーン・スノー)
- Monstera Thai Constellation 'Electrolyte'(モンステラ・タイ・コンステレーション・エレクトロライト)
- Monstera Thai Constellation 'Yellow Form'(モンステラ・イエロー・タイ・コンステレーション)
日本・アジア圏で流通が増えているモンステラの新系統
- Monstera deliciosa 'White Lava'(モンステラ・デリシオーサ・ホワイト・ラヴァ)
- Monstera deliciosa 'Siam Mint'(モンステラ・デリシオーサ・サイアム・ミント)
- Monstera 'Light Lime Variegated'(モンステラ・ライト・ライム・バリエガータ)
- Monstera 'Lemon Lime'(モンステラ・レモン・ライム)
モンステラデリシオーサ 系統・地域変種
- Monstera deliciosa ‘Unniiae’(モンステラ・デリシオーサ・ウンニアエ)
トレードネーム、TC株って何?日本の家庭環境で育つの?
トレードネームとは?
トレードネーム(Trade Name)とは、モンステラの学名や正式な園芸品種名ではなく、販売や流通の際に付けられる商業的な呼び名のことです。
たとえば、Monstera 'Shamrock Shake'(モンステラ・シャムロック・シェイク) やMonstera 'Ocean Mint'(モンステラ・オーシャン・ミント)といった名前は、いずれも学名ではなく、販売者やナーセリーが付けた呼称です。
同じ遺伝的系統でも販売元によって異なる名前が使われることがあり、「トレードネーム=遺伝的に唯一の品種」ではない点に注意が必要です。また、正式な品種登録(cultivar registration)がされていないものがほとんどで、市場ではSNS発祥の通称がそのまま定着するケースも増えています。
TC株(組織培養株)とは?
TC株(Tissue Culture株)とは、親株の一部の細胞を無菌状態で培養して増やした「クローン株」です。日本語では「組織培養株」や「メリクロン株」と呼ばれます。この技術によって、同じ性質を持つ株を大量に生産できるため、特に希少な斑入りモンステラや新品種の安定供給に広く利用されています。
TC株の特徴
- 人工的に増やされたクローン株で、遺伝的に均一
- 病害が少なく、供給が安定している
- 一方で、初期成長が極めて遅く、環境変化に弱い個体が出やすい
- 量産が進むにつれ、市場価格が下がりやすい
つまり、TC株における「レア」という価値は時間とともに失われやすく、「希少=遺伝的価値」ではなく「流通量の少なさ」を意味していることが多いのです。
日本の家庭環境で育つの?
温室のように温度・湿度・光量が安定している環境であれば、TC株や斑入りモンステラも問題なく成長します。しかし、日本の一般的な住宅環境は四季の影響を強く受けるため、条件が合わないと成長が極端に遅くなったり、葉が傷んだりすることがあります。
実際に育ててみて感じること
斑入りモンステラは、見た目の美しさに反してとても繊細です。葉の白い部分が多いほど光合成ができないため、成長が1/3〜1/5程度に遅くなることもあります。
また、わずかな日照や温度変化でも斑が安定しなかったり、樹形が乱れることもあります。特に高額な株は、購入後に環境を再現できなければ枯れるリスクが高く、「買うより育て続ける方が難しい」と感じる方も少なくありません。
そのため、価格が落ち着き、環境に強い個体が増えてから購入するのが安全です。植物は時間とともに市場に馴染み、強い株が残っていきます。焦らず、手に入れる「タイミング」を見極めることもモンステラ栽培の楽しみの一つです。
上記のモンステラは、一体どんなモンステラなんだろう?と気になられた方がいると思うので、一部のモンステラの価格と合わせて以下のページでまとめています。
モンステラボルシギアナ
Monstera Borsigiana
モンステラボルシギアナは、楕円形の葉に穴があく種類がメインとなります。その為、モンステラデリシオーサの様に、コンパクタ、シエラナ、スケルトン、タイコンステレーション、マクロコズムといった上記でご紹介した豊富な種類はありません。白斑であればホワイトタイガー(アルボ)、黄斑であればオーレアと呼ばれる種類に分類されています。中にはレアな種類として、一株で白斑と緑斑の両方を持ち合わせるセブブルーミントや、デリシオーサとボルシギアナ両方の特徴を持つモンステラデリシオーサボルシギアナミント(モンステラデリシオーサミントブラジリアンフォーム、モンステラボルシギアナミントという様な名前で呼ばれている事もあります。)も実際に育てているとボルシギアナの特徴が強いと感じる為、ボルシギアナの種類の括りでご紹介します。
モンステラボルシギアナの詳細については、以下のページでまとめています。
デリシオーサとボルシギアナの違い
上記でご紹介したモンステラデリシオーサとモンステラボルシギアナはとても似ています。それぞれの違いについては、以下のページでまとめています。
モンステラの花の種類と開花比較
Types of Monstera Flowers and Bloom Comparison
私は湘南エリアのマンションの庭で、モンステラ・デリシオーサ(Monstera deliciosa)およびモンステラ・ボルシギアナ(Monstera borsigiana)を実際に越冬・開花・交配まで育てています。ここでは、代表的な2種類のモンステラの花の違いを、実際の開花写真とともに比較できるようにまとめました。
私が栽培しているモンステラ・デリシオーサの仏炎苞(ぶつえんほう/花を包む白い苞)はおよそ35センチ前後まで大きく成長しました。一方で、モンステラ・ボルシギアナの仏炎苞はその約半分のサイズで、デリシオーサに比べると全体的にコンパクトで繊細な印象です。両者を比べることで、同じモンステラ属でも花のスケールや形状に明確な違いがあることが分かります。


また、モンステラ・デリシオーサの系統に属するモンステラ・スケルトン(Monstera Skeleton)の花や、モンステラ・ボルシギアナの系統にあたるモンステラ・オーレア(Monstera aurea)の花も非常に貴重です。これらは流通量が少なく、実際に開花した記録がほとんど残っていない希少な花です。
私はこれらのモンステラを自宅の庭で交配し、新しい形質をもつモンステラの作出を試みています。自然環境の中で開花・受粉を成功させるには、温度・湿度・光量・風通しのバランスが極めて重要であり、湘南地域の温暖な気候はその挑戦を後押ししてくれています。
モンステラの花は観葉植物としての姿だけでなく、植物の生命力と多様性を象徴する美しい構造を持っています。観葉植物としての魅力を超えて、「花を咲かせ、交配まで見届ける」という体験を通して、モンステラという植物の奥深さを感じることができます。
モンステラに花を咲かせる方法については、以下のページで詳しくまとめています。
その他のモンステラ
Other
モンステラといえば、上記でご紹介したデリシオーサとボルシギアナが一般的ですが、モンステラの種類には、以下の通り様々な種類があります。マドカズラで有名なモンステラアダンソニーもモンステラの種類となります。私は専門家では無く、素人の愛好家ですので間違いがあればその都度修正していきます。
斑入りモンステラの種類
Variegated
斑入りのモンステラは、モンステラデリシオーサ、モンステラボルシギアナ、アダンソニー(マドカズラ)、sp. ペルー、レクレリアナといったモンステラの種類で見かける事があります。斑の色は、白斑、黄斑、緑斑、ミントなどがあります。また葉への斑の入り方によって、ハーフムーン、フルムーン、散斑などの呼び名があります。それぞれの内容について、以下のページでまとめています。
斑の色の種類
斑入りのモンステラで見かける斑の種類は、白色(白斑)、黄色(黄斑)、緑色(緑斑)、ミント色(ミント斑)です。
斑の入り方の種類
斑入りのモンステラは、斑の入り方によって、フルムーン、ハーフムーン、散斑の呼び名があります。
斑入りモンステラの種類は、以下のページでまとめています。
モンステラ属の学術的な分類について
Academic Classification of the Genus Monstera
モンステラ属(学名:Monstera)は、サトイモ科(Araceae)に属する熱帯植物のグループで、現在およそ59種が正式に確認されています。一方で、園芸の世界では「Thai Constellation」「Albo Variegata」「Shamrock Shake」など、組織培養(TC)や選抜育種によって生まれた多様なトレードネーム株が流通しており、学術的な種分類とは区別されます。つまり、園芸名まで含めると種類数は59種を超えますが、それらは学名上“Monstera属”とは別のカテゴリ(栽培品種・流通名)になります。
より詳しい学術的な分類体系(Monstera属の全種リスト・分類階層)については、以下の専用ページでまとめています。
本当に珍しいレアなモンステラの種類って何?
What Makes a Monstera Truly Rare?
TC株が普及した現代、“レア”という言葉が氾濫するモンステラ市場。価格や人気だけでなく、系統・履歴・遺伝的背景から見た本当の希少性を、購入者目線で詳しく解説します。
よくある質問
モンステラの種類について寄せられた質問と回答
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モンステラデリシオーサとモンステラボルシギアナはそれぞれ別々の種類のモンステラでしょうか?
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学術的な視点でのモンステラデリシオーサとモンステラボルシギアナの違いについては私は分かりません。ただし、モンステラデリシオーサとモンステラボルシギアナの名前で販売されているモンステラを実際に年単位で成熟するまで育ててみると、それぞれに違いがある事が確認できます。栽培過程で目視確認できる事実ベースで確認できた点については以下のページでまとめています。なお私は植物の専門家ではありませんので、参考情報としてご確認ください。
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なぜモンステラの種類を紹介するページなのにヒメモンステラが含まれていないのでしょうか?
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ヒメモンステラは「モンステラ」と名前がついていますが、実際にはモンステラ属(Monstera)ではなく、ラフィドフォラ属(Rhaphidophora)に分類される植物です。学名は Rhaphidophora tetrasperma(ラフィドフォラ・テトラスペルマ)で、日本では「リュウキュウヒメモンステラ」と呼ばれることもあります。
葉の形が幼苗時のモンステラ・デリシオーサ・コンパクタとよく似ているため、見た目から「ヒメモンステラ」として流通していますが、属レベルで異なるため「モンステラの種類一覧」には含めません。数十年前、モンステラ・デリシオーサ・コンパクタが実際に初代「ヒメモンステラ」の名称で流通していた時期もあるそうです。
見た目の類似から混同されやすいものの、モンステラ属はサトイモ科モンステラ属(Monstera)、ヒメモンステラはサトイモ科ラフィドフォラ属(Rhaphidophora)に属しており、近縁ではあるものの別種の植物です。その為、ヒメモンステラは、モンステラの種類の一覧には含めていません。
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モンステラの種類を一通り実際に育ててみて、このモンステラは育てやすい、このモンステラは育てにくいなどあったら教えてもらえますでしょうか?
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本ページに記載しているモンステラは全て実際に自ら育ててみたモンステラになりますが、育てやすのはモンステラの代表的な種類であるモンステラデリシオーサになります。ただしモンステラデリシオーサは、大切に育てると私の屋内栽培環境での鉢植え栽培だと3年で一枚の葉のサイズが60センチまで成長してしまいます。屋外環境での地植え栽培だと一枚の葉のサイズが1メートルまで成長してしまいます。また横に大きく広がりながら縦へと成長する為、大きなスペースが必要となってきてしまいます。この点、モンステラボルシギアナについては、モンステラデリシオーサほど一枚の葉のサイズは大きくならないのと、横に広がりすぎず縦に成長するので、モンステラデリシオーサほどスペースが必要となりません。育てにくいモンステラは、斑入りのモンステラです。特に黄斑、白斑が鮮やかに入る斑入りのモンステラは、葉が傷みやすく長年維持する事がとても難しいです。
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モンステラボルシギアナよりもモンステラデリシオーサの方が強い株が多いと聞きますが事実ですか?
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一般的にはモンステラデリシオーサの方が株が強く、環境変化に耐えやすい傾向があります。デリシオーサは葉や茎が厚く、根張りも力強いため、乾燥や光量の変化にも比較的強いです。一方、モンステラボルシギアナは葉がやや薄く、成長スピードは速いものの、急な乾燥や低温に弱い一面があります。ただし、これはあくまで「傾向」であり、個体差や育て方でも変わります。私は地植えでモンステラデリシオーサもモンステラボルシギアナも花が咲くまで育てていますが、花が咲くまで成熟したモンステラボルシギアナは、モンステラデリシオーサとまったく差が無い程、強靭な株へと成長します。モンステラの地植え栽培についての詳細は、以下のページでまとめています。
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「NoID モンステラ」って何ですか?
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「NoID(ノーアイディー)モンステラ」とは、学名や品種名がまだ正式に同定されていない、いわば“名前の決まっていないモンステラ”のことを指します。園芸の世界では、栽培中に偶然現れた斑入りや葉形の変化(いわゆるスポーツ株=突然変異株)が、分類が未確定のまま市場に出回ることがあります。そのような場合、販売者は「NoID」と記載し、「正式登録前の暫定株」「品種断定できない株」という立場を示します。
私自身もこれまでに複数のNoIDモンステラを実際に育ててきましたが、見た目の特徴だけでは同定は難しく、時間をかけて葉の形や斑の入り方、成長の安定性を観察する必要があります。特に注意したいのは、「NoID=レア品種」ではないという点です。あくまで未分類の状態を意味するものであり、珍しさや希少性を保証するものではありません。
そのため、購入を検討する際は、来歴・安定性・育成履歴といった情報を重視することが大切です。外見の派手さに惑わされず、時間をかけて正体を見極めていく過程こそが、NoIDモンステラを育てる最大の楽しみでもあります。「NoID(ノーアイディー)モンステラ」の詳細については、以下のページで詳しくまとめています。
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モンステラ販売で見かける「TC」って何ですか?
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「TC」とは Tissue Culture(ティッシュカルチャー)=組織培養 の略です。モンステラなどの植物を、茎や葉の一部から無菌状態でクローン増殖させる技術を指します。TC株(組織培養株)は、親株と同じ遺伝情報を持つ苗を大量に増やせるため、近年はモンステラの流通にもよく使われています。
ただし、培養直後の苗は「未順化株」と呼ばれ、湿度や光の変化に弱いことがあります。購入する際は、「順化済みTC株」と書かれているものを選ぶと安心です。モンステラのTC株(組織培養株)についての詳細は、以下のページで詳しくまとめています。
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モンステラのビトロ苗ってなんですか?
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「ビトロ(vitro)」とは、ラテン語で「ガラスの中」という意味で、英語では “in vitro(イン・ビトロ)=試験管内で” を指します。したがって、ビトロ苗とは「試験管内(無菌環境)で培養された植物の苗」 のことです。つまりこれは、組織培養(Tissue Culture:TC)によって作られた苗を指す言葉です。販売上は「ビトロ苗=組織培養株の幼苗」とほぼ同義です。「ビトロ苗=実験室から出たばかりの“赤ちゃん株”」と考えると分かりやすいです。購入直後は普通の室内環境では耐えられないため、湿度ドームや保湿ケース内での管理が推奨されます。
モンステラやフィロデンドロン、アンスリウムなどの「ビトロ苗」は、多くがタイ・ベトナム・インドネシアなどの培養ラボから出荷されています。現地では「in vitro seedling」「TC seedling」「flask plant」などと呼ばれ、日本ではそれを“ビトロ苗”というカタカナ表記で輸入販売しているわけです。
購入上の注意点として、「ビトロ苗」はまだ順化が済んでいないことが多く、購入者が自宅で順化させる必要があります。このため、経験の浅い方にとっては難易度が高い苗でもあります。
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モンステラ販売で見かける「OC」って何ですか?
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「OC」とは Original Cutting(オリジナルカッティング) の略で、親株から直接カットして増やした株のことを指します。つまり、組織培養(TC)ではなく、実際の植物から挿し木で増やしたモンステラです。
OC株は、親株と同じ環境で成長してきたため、根がしっかりしており、順化の必要がありません。一方で、増やせる数が限られるため、TC株よりも価格が高くなる傾向があります。安心して育てたい場合は「OC(実株由来)」と明記された株を選ぶと良いでしょう。私自身が親株から直接カットして増やした株の詳細について、以下のページで詳しくまとめています。
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近年流通している珍しいレアなモンステラの種類のほぼ全てが、TC株、組織培養株(メリクロン株)として高値で販売されていますが、クローン(コピー)個体という事はいくらでも増やせる事を意味すると思うのですがこの考え方はあっていますでしょうか?
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近年流通しているモンステラの希少品種や「レア」と呼ばれる個体の多くは、実際には組織培養(Tissue Culture=TC株、メリクロン株)によって人工的に増殖された“クローン個体”です。組織培養とは、親株の茎頂や葉片、メリステムなどを無菌状態で培養し、遺伝的に同一な植物を人工的に再生産する技術です。この方法により、親株と全く同じ遺伝情報を持つ植物が、理論上は何千・何万株でも生み出せます。
つまり、「TC株=クローン=コピー個体」という点から見れば、理論上はいくらでも増やせるという理解は正しいです。実際、タイコンステレーション(Monstera Thai Constellation)やホワイトラバ(White Lava)、オーシャンミント(Ocean Mint)なども、もともとは限られた親株から組織培養によって派生したクローンが世界各地に出回っています。
しかし、「いくらでも増やせる=誰でも簡単に増やせる」という意味ではありません。現実には、以下のような制約やリスクが存在します。
- 技術的・設備的ハードル
組織培養には無菌環境、適切な培地(糖・ホルモン濃度)、光・温度制御設備が必要であり、家庭レベルでは不可能に近い技術です。商業ラボではこれらを自動化しながら大量生産しますが、維持コストも高く、失敗率も一定数あります。 - 法的制約(知的財産・品種権)
登録品種(例:Thai Constellation)は国際的に権利保護されており、無断で培養・販売を行うことは品種法や商標法違反となる場合があります。特に欧州や米国では、植物育成者権(Plant Breeders’ Rights, PBR)が厳格に適用されています。 - 品質・変異のリスク
組織培養中に「体細胞突然変異(somaclonal variation)」が発生することがあり、同じ品種名でも斑の出方や成長の勢いが異なる個体が生まれます。そのため、全てのTC株が「完全なコピー」とは限らず、時に「レア変異」とされる株が生まれるのもこの影響です。
市場における「レア」という言葉の多くは、遺伝的な希少性ではなく、市場流通量の一時的な少なさ(供給不足)を指す場合がほとんどです。TC株は基本的に同一遺伝情報を持つため、「希少」「レア」と表現される時点では、単に「まだ生産数が少ない」「国内流通前の初期段階」といったマーケティング上の希少性(遺伝的な希少性では無い)であることが多いのです。やがてラボでの生産体制が整い、輸入が進むと供給量が急増し、価格が落ち着いていきます(実際に、2020〜2025年の間にタイコンステレーションやアルボ系の価格は大幅に下落しました)。
つまり、TC株は本質的に「再生産が容易な人工株」であり、「レア」とされる要素は時間経過とともに失われていくのが自然な流れです。植物としての価値は、“希少性”ではなく、“どれだけ健全に、美しく育て上げられるか”という育成の質です。
- 技術的・設備的ハードル
育てやすく観葉価値が高いモンステラ
These are recommended Monsteras.
上記で様々な種類のモンステラをご紹介しましたが、実際に私も育てている一般家庭において、育てやすく観葉価値も高いと個人的に感じたモンステラの種類を以下にご紹介します。なお、モンステラの株選びでは、以下の点もとても大切だと実際に育ててきて感じました。
- 斑が入りすぎる斑入りのモンステラ(特にボルシギアナの仲間)は傷みやすいので絶対に株選びから避けた方がよいです。私も鮮やかな斑を持つ高額なモンステラを購入してとても残念な気持ちになった事があります。
- ボルシギアナよりもデリシオーサの方が葉が肉厚なので育てやすいです。ただしデリシオーサは横に広がりながら成長するので場所を取る点はデメリットです。何株も所有してしまうと育てきれなくなってしまいます。
- 福助の様な丸葉のモンステラは、未成熟時は可愛いのですが、成熟するにつれ普通のモンステラとの見栄えに差が感じられず、個人的には観葉価値の高さをあまり感じる事ができませんでした。魅力的な株に出会えれば改めてご紹介します。
- 奇形株は、モンステラらしい丸葉であると成熟時の観葉価値を感じられるのですが、あまりにも乱れすぎる株は避けた方が無難な気がします。乱れすぎると「このモンステラは一体何なんだろう?」と違和感を感じてしまいました。海外で人為的に生み出される自然界には存在しない様な過剰な斑入りのモンステラも同じく違和感を感じてしまいます。何事もほどほどに自然のままの姿が一番美しいと感じます。これも個人的な感想です。
- モンステラの羅紗葉は、とても珍しいのですが成熟株になればなるほど通常のモンステラの様にツルツルの葉に戻ってしまいました。1メートル近い葉になっても羅紗葉を維持する株には出会えた事がありません。
- 根が細いモンステラの種類(特にマドカズラ系の子株)は環境の変化にとても弱い為、冬や季節の変わり目にダメージを受けやすく大きく育てるのが難しいです。特に初心者の方は、寒くなる直前に根が細いモンステラを入手してしまうと、環境の変化が大きい冬場を乗り切る事が難しい為、選ばない方が無難です。
- レアで高額な斑入りのモンステラは購入しません。温室なら育てられるかも?しれませんが、日本の一般家庭で美しく立派に育つ事は無いと感じる為です。
モンステラには様々な種類がありますが、上記の点を踏まえて、育てやすいと感じたモンステラの種類は以下の通りとなります。年単位で栽培できている事を証明する為に、栽培を開始した日付を記載しています。詳細を確認していただければ、それぞれのモンステラの現時点での株の成長・成育状態を確認する事ができます。
モンステラが庭で開花
越冬させたモンステラが
続々と開花中!